ノバセルコラム
スポーツトレーナーになるには?王道ルートと現実【後編】
前編では、スポーツトレーナーを目指すうえでの資格や進路、学校選びについて紹介しました。
しかし、資格を取得しただけでスポーツ現場に入れるわけではありません。
実際の現場では、経験や人とのつながり、行動力、人間性なども重要になります。 では、スポーツ現場に近づくためには何が必要なのでしょうか。
後編では、現場経験者の話をもとに、スポーツトレーナーとして現場で活躍するために必要な考え方や行動について紹介します。
現場に入るには「人とのつながり」も大切
スポーツトレーナーの世界では、一般企業のように分かりやすい採用ルートがあるとは限りません。
求人が大きく公開され、試験を受けて、順番に採用されるというよりも、関係者からの紹介や、過去のつながりからチャンスが生まれることも多い世界です。
だからこそ、人とのつながりが大切になります。
ただし、これは最初から特別なコネを持っていなければ無理という意味ではありません。
つながりを作るための行動
- 見学に行く
- 現場経験のある先生に会いに行く
- 治療院で働く
- スポーツ現場に関わっている人から話を聞く
- 勉強会や実習に参加する
- インターンの機会を探す
こうした行動を通じて、人とのつながりを作っていくことが大切です。
実際に、スポーツ現場に入ったトレーナーの中には、学校の先輩、治療院の先生、講習会で出会った人、競技関係者などとのつながりがきっかけになった人もいます。
スポーツ現場に近づくためには、情報を待つだけではなく、自分から動いて人に会いに行く姿勢が必要です。
学生のうちにやっておきたいこと
スポーツトレーナーを目指す学生が、在学中にやっておきたいことはいくつかあります。
1. 解剖学・生理学をしっかり学ぶ
まずは、学校で学ぶ基礎科目を大切にしましょう。
解剖学や生理学は、試験のためだけの科目ではありません。現場で選手の体を理解するための土台です。
肩の構造、肘の動き、股関節や膝の使い方、筋肉の働きなどを理解しているかどうかは、トレーナーとしての評価や判断に大きく関わります。
2. できるだけ多くの人の体を触る
学生のうちから、できるだけ多くの人の体に触れる経験を積むことも大切です。
治療院でのアルバイトや研修、スポーツ現場のサポート、実技練習など、機会があれば積極的に経験しておきたいところです。
筋肉の硬さ、関節の動き、左右差、痛みの反応などは、教科書だけでは分かりません。
多くの人の体を触ることで、自分の中に「普通の感覚」が蓄積されていきます。その感覚があるからこそ、「いつもと違う」「少し緩い」「少し硬い」「これは注意が必要かもしれない」と判断できるようになります。
3. 1つの考え方に偏りすぎない
治療法やトレーニング理論には、さまざまな考え方があります。
どれか一つを深く学ぶことも大切ですが、若いうちは一つの方法だけを信じ込みすぎないことも大切です。
どんな方法にも得意なことと不得意なことがあります。何でも治せる万能の方法はありません。
いろいろな技術や考え方に触れることで、選手の状態に合わせて対応できる引き出しが増えていきます。
4. 見学・勉強会・現場に積極的に行く
スポーツ現場に入りたいなら、待っているだけではチャンスは来ません。
見学をお願いする。勉強会や講習会に参加する。現場経験のある先生に話を聞く。インターンに応募する。治療院やスポーツチームで経験を積む。
こうした行動が、将来のチャンスにつながります。
現場に近い場所に行くことで、求人情報だけでは分からない話を聞けることもあります。人とのつながりが、新しい道を開くこともあります。
最初から理想の現場に入れるとは限らない
スポーツトレーナーを目指す学生の中には、「プロチームで働きたい」「1軍の選手を見たい」「トップアスリートをサポートしたい」という目標を持っている人もいると思います。
その目標は素晴らしいものです。
ただし、最初から理想の現場に入れる人ばかりではありません。
実際には、治療院、スポーツ整形、学生スポーツ、社会人チーム、独立リーグ、下部組織、リハビリ部門などで経験を積みながら、少しずつ上のステージを目指すことが多いです。
大切なのは、最初の場所が理想通りでなくても、そこで何を学ぶかです。
最初の現場で積みたい力
- 目の前の患者さんや選手にしっかり向き合う力
- 技術を磨く姿勢
- 報告・連絡・相談を身につけること
- チームの中で動く経験
- 信頼される仕事をする意識
プロチームに入るにはタイミングも重要
プロチームのトレーナーは、毎年必ず一定数の採用があるとは限りません。
欠員が出たとき、チーム体制が変わるとき、新しい部門ができるときなどに募集が出ることがあります。
つまり、どれだけ実力があっても、その年に募集がなければ入れないこともあります。逆に、タイミングが合えばチャンスが広がることもあります。
だからこそ、日頃から情報を集めておくことが大切です。
スポーツ現場に関わる先生、治療院、学校の先輩、チーム関係者などとのつながりがあると、募集や見学、インターンの情報に触れやすくなります。
準備できる人は現場で信頼される
スポーツトレーナーに必要なのは、知識や技術だけではありません。
現場では、先を読んで準備できる力も大切です。
言われたことだけをするのではなく、「この後、選手は何を必要とするか」「この状況なら、何を用意しておくべきか」「次にスタッフが困りそうなことは何か」を考えて動ける人は、現場で信頼されやすくなります。
たとえば、選手がすぐにケアを受けられるように準備しておく。必要な道具を先にそろえておく。移動や練習後の流れを考えて、チームがスムーズに動けるようにする。こうした小さな準備や気遣いは、表には見えにくいかもしれません。しかし、現場ではとても大切な力です。
スポーツトレーナーは、選手の体を見るだけでなく、選手やチームが動きやすい環境を整える役割もあります。
現場に近づける人は「なる」と決めて動いている
スポーツトレーナーを目指す人の中には、「なれたらいいな」「いつかスポーツ現場に入りたい」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、現場に近づいていく人は、ただ待っているだけではありません。
「スポーツトレーナーになる」と決めて、人に会いに行く。現場を見に行く。学べる場所を探す。経験できる環境に飛び込む。必要な資格を調べる。自分に足りないものを補おうとする。
この行動の差が、将来の差につながります。
業界は狭い。だからこそ人間性も大切
スポーツトレーナーの世界は、意外と狭い世界です。
チーム関係者、治療院、学校の先生、卒業生、現場経験者など、人と人がつながっていることが多くあります。
そのため、良い評判も悪い評判も伝わりやすい世界です。
技術があることは大切です。知識があることも大切です。
しかし、それだけではなく、真面目に取り組む、約束を守る、謙虚に学ぶ、人の話を聞く、感謝を忘れない、周りに迷惑をかけない、信頼される行動をする、といった人間性も見られています。
信頼される人に共通する姿勢
- 真面目に取り組む
- 約束を守る
- 謙虚に学ぶ
- 人の話を聞く
- 感謝を忘れない
- 周りに迷惑をかけない
- 信頼される行動をする
スポーツ現場では、選手やスタッフとの信頼関係が欠かせません。だからこそ、学生のうちから人として信頼される行動を積み重ねることが大切です。
スポーツトレーナーに必要なのは、行動力・忍耐力・向上心
スポーツトレーナーを目指すうえで大切なのは、知識や技術だけではありません。
現場で働くには、行動力が必要です。自分から動く。人に会う。学びに行く。見学をお願いする。経験できる場所を探す。そうした積極性が、現場への入口になります。
また、忍耐力も必要です。
スポーツ現場では、自分の思い通りにいかないことも多くあります。休みが少ないこともあります。人間関係に悩むこともあります。選手の状態がなかなか良くならないこともあります。努力しても、すぐに結果につながらないこともあります。
それでも学び続け、経験を積み続ける力が必要です。
そして、向上心も欠かせません。
今の技術で満足しない。新しい知識を学ぶ。いろいろな考え方に触れる。自分の足りない部分を認めて成長する。
スポーツトレーナーは、資格を取って終わりの仕事ではありません。現場に出てからも、学び続ける仕事です。
まとめ

共同監修
※ 五十音順に掲載しています。
小滝 康樹
Yasuki Kotaki
トレーナー歴 23年
鍼灸師・柔道整復師
2002年〜2024年 阪神タイガース トレーナー
2002年にトレーナーとして阪神に入団。阪神で23年間トレーナーを務め、2024年に退団。在籍期間中は3度のリーグ優勝と1度の日本一を経験。
野間 卓也
Takuya Noma
トレーナー歴 42年
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・日本スポーツ協会アスレティックトレーナー
1982年〜2024年 オリックス・バファローズ トレーナー
42年間にわたり、阪急ブレーブスからオリックス・バファローズまで、トレーナーとしてチームを支える。在籍期間中は6度のリーグ優勝と2度の日本一を経験。数々の名選手のケアを行ってきた。
弓岡 尚幸
Takayuki Yumioka
トレーナー歴 32年
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師
2001年〜2007年 広島東洋カープ トレーナー
2008年〜2014年 阪神タイガース トレーナー
名門「小守スポーツマッサージ療院」にて、Jリーグ、プロ野球、実業団スポーツなど数多くのトップアスリートをサポート。
2006年には第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本代表トレーナーとして世界一に貢献し、2008年には北京オリンピックにも帯同。
長年にわたりトップアスリートのコンディショニングと競技力向上を支えてきた。

※ノバセルでは、さまざまな分野で活躍する先生方の経験をもとに、参考になる情報を発信しています。